建築物は無数の色の組合せです
建築物は様々な材料の集合体です。それぞれの材料(建材といいます)には当たり前ですが色があって、無数の色の組み合わせで全体が出来上がっています。
大きな部分だと外壁の塗装やタイルがあり、その色は建物全体の印象を決定付けます。他にもサッシ、玄関ドア、廊下の床、手すりなど。室内だとフローリングの床、壁や天井のクロス、建具、キッチンや洗面台などの器具などでしょうか。
それぞれの建材は何種類か色が用意されており、発注時にはもちろん色を指定します。この大量の色決めがやっかいだったりします。よくトラブルになりましたね。
色決めは基本的に設計をした人がします。見た目に大きな影響を与える外壁の塗装やタイルなどについては、施主も加わって決定するケースが多くありました。もちろん細かいところまで施主が決定するケースもあって様々でしたが。
色決めは周囲の部分との配色の組合せを考慮して行います。センスというより配色のルールにのっとるといいますか。ルール通り組合せればそうヘンテコな配色にはなりません。しかしながら時々、目にうるさいとんでもない配色の建物を見かけたりします。施主の好みなのか設計のセンスなのか、なんだかなあと思います。もちろん個人の所有物のなので好きにしていいのですが、多くの人の目に触れるものなのでどうかと。
小さい面積と大きい面積では色の印象が違う
色についてもめるのは、たいてい外壁関係でした。ぱっと見で分かりやすいから当然といえば当然ですが。
なんか思ってたイメージと違うな・・・
竣工間近の建物の前で、このようにおっしゃる施主の方がいらっしゃいます。現場の人間としては、あーそう言い出したかあとうんざりしますが、顔はあくまで営業スマイルで対応です。
手元にある小さい見本と現場を見比べると、確かにちょっと違うかもと思わなくはない。もちろん、色が違うわけではありません。決定通りのものです。その証拠に見本帳を現場の外壁にピタッと合わせるとほら同じ色、となります。
なぜ、施主さんのイメージと違ってしまうのか分からないでもありません。色を決めるときは見本帳や塗り板など小さな面積のものしかありません。A4くらいの面積のものと何メートル何十メートルという大きさの面積とでは受ける印象がまったく違います。
人の感覚として明るい色のものは大きな面積になると薄く感じ、暗い色のものは濃く感じるそうです。という訳で、なんか色が薄いわ、という声が多かった気がします。
施主のイメージの問題なのでやっかいである
外壁が見えているということは、もう足場などスカッとなくなっている頃。やり直しをしようとしてもそう簡単にはいかない。ま、やるつもりもないですけど。
しかし施主さんは納得いかないわ、という状態になるともう現場監督一人では手に負えません。小さな会社でしたので、社長以下頭数そろえての説得というかお願いになります。もちろん、間違えたわけではないので強気に出てもいいのですが、そんなことをしても解決にならないのは明白ですし。
いやいやこの明るくあたる色のほうがこの素晴らしい建築には合うような気がします、とか。口からでまかせの苦しい営業トークを繰り出していたみたいです。営業の方ご苦労様です。
そんな説明にもかかわらず、いくら説明しても納得してくれない施主さんもまれにいたようです。ワシの思っていたイメージと違う、の一点張り。ごねてごねて結局値引きを迫られるとか、あったらしいです。とんでもない奴がいるもんです。
いっそのこと我が社はこれとこれとこの色の組み合わせしかありません!となったらなんと楽なことか。なんでもかんでも自由に決められるってのもしんどいものです。
色決めの時には、これは小さい面積ですから明るくあたりますよ、と言うべきではありますが、そうして暗めを選んだ結果、なんだか濃いぞ!なんて言われたりもするので、これまたやっかいで悩ましい問題です。
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