日本アニメの金字塔「風の谷のナウシカ」。
小学生の頃に見て、衝撃をうけました。そこには自分の想像を超える世界観が描かれていました。
安田成美さんの歌う主題歌が世紀末的な独特の雰囲気を醸し出していたことが非常に印象に残っています。後に、作詞が松本隆で作曲が細野晴臣という超大御所だということも知って、印象を新たにした思いがあります。
その映画の主人公ナウシカはグライダーのような飛行具にのっています。名前はメーヴェといい、劇中ナウシカがそれに乗り飛ぶシーンは象徴的に多く描かれています。宮崎駿監督の得意とする浮遊感が存分に堪能できる映画になっているのではないでしょうか。
映画を観た人なら一度は思うでしょう「メーヴェにのりてえ!」と。
そして、ほとんどの人は「のりたいなあ」というぼんやりとした願望の所で終わっているはず。私もその中の一人ですが。しかし、そのぼんやりとした願望の先まで進み、現実のものとした人がいました。この本の著者の八谷和彦さんです。名前に「谷」が入っているなあ。
「イヤイヤ、あれはアニメの中の話であって、現実の技術では無理っしょ」と思うでしょ?たいていの人はそう思います。私も本のタイトルを見た時そう思いました。
そうやって自分自身で壁を作り限界を決めてしまう、駄目ですよね。現時点で手に入るものでとにかく作っちゃおう、と著者の八谷さんは考えたようです。
素晴らしい!
結果、出来上がった飛行具は、映画の中のものとはちょっと(かなり?)違うプロダクトになってはいましたが。そこにはあの「メーヴェ」が現実のものとして存在していました。
作りたい!よしやってみよう!!となり、紆余曲折あるもののなんとか完成までこぎつける話がこの本です。いやー、熱いです。自分の夢に情熱をささげている姿はまぶしくてうらやましくて、少し嫉妬します。そして今の自分を見て思います。なにやってんだよオレは、と。
日産自動車の永ちゃんのCMが心に突き刺さるのも、みんなみんな”やっちゃえ”ていない現実があるからだと思います。
本の中で印象的な言葉があります。
「中二病」は普通、あまりいい意味では使われない言葉です。思春期真っ只中、不安定で幼い心理状態から生まれた行動を揶揄しています。でも、「中二の心のまま、大人としてそれをビジネスにできれば最高!」ではないでしょうか。
中二病でもいいじゃないか。つきささります。
みんなそう思っているはず。
中二病的勢いで人生を駆け抜けられたら、どんなに素晴らしいことだろうかと。
私たちには現実の生活があり、様々な制約の中で暮らしています。普段、自宅と会社の往復のみを繰り返していると、自分がとらえることのできる範囲がどんどん小さく狭くなっていく感覚に陥ります。その後、その「小さく狭い」という感覚もなくなってしまい、普通になってしまいます。
で、その小さく狭い世界の中で、悶々と不満だけを募らせて日々生きている。
自分が半径5メートルの世界でしか生きていない、とふと我にかえることがあります。体が健康で、家族との関係も良好で、仕事もある、ということはかなり幸せなことなんだろう。私自身、平凡な日常が好きですし。
でも思います。
中二の時に思い描いていた大人になったオレはこんなんじゃなかったよね、と。せっかく天文学的ラッキーさでこの世に生まれてきたのに、自分の命の使い方はこんなんで良かったのか?死ぬ間際にオレの人生これで良かった、と思えるのか?
こんなことを言うと「何青いコト言ってるんや。生きていくということはそんな甘いものじゃないよ」という至極真っ当な声が聞こえてきそうですが。そんな思いだけでは生きていけないとは思います。
現実の生活を100%変えてしまうことはできない。でも、10%、いや5%くらいは変えることができる可能性があるかもしれない。中二病的なワクワクした気持ちを一部でも生活の中で感じることができれば、それはとてもすごいことで素敵なことです。
そんなことを思わせてくれた本でした。
まだ読んだことのない人、是非読んでみてください。必ずテンション上がりますから。うおーオレもやってやるぜ!という根拠のない自信が湧きあがってきますから。
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