オーディオブックというサービスは読書というものを変えるのでは?と思うくらいです。
今までよりも手軽に本に触れることができ、より多くの人が本に親しめるようになり、人々の知識・知恵の共有が進んでいく未来がなんとなく、見える、ような気がする。
オーディオブックで本を読み始めてもう2年に近くになります。オーディオブックを体験して感じたこと、おすすめの理由など語っていきます。
オーディオブックとは
オーディオブックとは、本をナレーターさんや声優さんが朗読したものを録音した音声コンテンツ全般のことをいいます。本を読む、のではなく、「聴く」ためのものでしょうか。
このようなものは昔から、カセットブックとかCDブックとかで細々と存在はしてきました。が、しかし、カセットやCDを入手して、それをプレーヤーにかけて聴く、という行為はとても面倒くさいものでしたので、あまり一般的ではありませんでした。
しかし、ここにきてスマホという便利なものを、あたり前に皆が持つようになりました。そのことで、データをどこにでも持ち歩いて、いつでもどこでも聴くことができる、というオーディオブックはにわかに脚光をあびるようになったということです。
いつでもどこでも聴くことができて、本を「読む」ことと違って、他のことをしながら聴くことができるオーディオブックは、本をさらに身近なものにしてくれます。
朗読といっても、単に文字を読み上げたものではなく、プロのナレーターさんが感情をこめてセリフを語り、効果音その他の演出も様々されています。エンターテイメントとしても質の高いコンテンツだと思います。
オーディオブックをおすすめする理由
とにかく楽、便利
ぼーっとしてても、寝転がっていても、目を閉じていても読書ができます。
本を読むことは能動的な行動です。だから読んだ内容が頭に残り身に付くわけですが。反面、気軽さには欠けます。本を読み始めるには「おしっ!いっちょ本でも読むか」とばかり気合いを入れる必要があります。なんせ、本を手にとってページをめくり、字を読んで、内容を理解をしなければいけませんので。そのことが読書のハードルを上げてしまっている感もあります。
オーディオブックならそのへんの障害もクリアできます。とりあえず流しておこうか、このへんは聴き飛ばしておいてもいいか、このへんは集中して聴くか、など自由がききます。
スマホで聴けるので、ちょっとしたスキマ時間、移動時間も有効活用できてしまいます。忙しくて時間のない現代人には役に立つサービスでしょう。
ま、私自身はちょっとしたスキマ時間、移動時間はぼーっとしていたいタチですが。
本で読もうとすると確実に挫折するであろうものを読みきることができる
昔からの名作、最近話題になったベストセラー、一度は読んでみたいと思います。しかし、本屋さんでこれみよがしにどーんと平積みされた単行本を見ると、ひるみます。
これは読めんわと。買っても確実に積ん読になってまうわと。
また、さほどブ厚くない本であっても、内容が難解であれば読みきることは困難になります。内容がまったく頭に入ってこないので、途中で意欲をくじかれてしまいます。
無理や、これ以上読み進めるモチベーションを保てんと。
でも、オーディオブックなら安心です。かけっぱなしにしておけば、とにかく終わります。
ながら聴きでも最後まで聴けば、なんとなく内容は頭に残るものです。特に難解な文章はとにかくざっとでも内容を把握することが重要です。
がんばって一字一句理解しようとすると挫折してしまうので、オーディオブックでとりあえず聴ききってしまうことは、非常に効果的なやり方だと思います。
物語に入り込める
目で文字を追う必要がないため、ひとつひとつの言葉に意識が集中します。
言葉の表現や言い回しを深く味わうことができることで、物語にぐっと入り込むことになります。このことはオーディオブックを聴き始めて感じた新しい発見でした。目で見えない代わりに頭の中で言葉のイメージが鮮明に感じられます。
やっぱり日本語ってすばらしいわ!って改めて思いました。
数をこなす達成感を得られる
紙の本であれば能動的に本を手に取り文字を目で追わなければいけません。しかし、オーディオブックは流しておけばそのうち勝手に終了してしまいます。聴いている聴いていないかかわらず。
全部を集中して聴いているこたあありません。どんどん読了済みが増えていきます。このことで久しぶりに乱読をしている爽快感を感じることができました。そのようにどんどん読み進めて数をこなすことができます。よよって、積ん読く(つんどく)状況に陥ることはありません。積ん読く状況は意外とストレスになってしまいますから。
読書をしようとしてストレスになるのでは本末転倒です。オーディオブックではさほど労力をかけずに読了にもっていけるため、その都度達成感を得られます。
オーディオブックが紙の本にかなわないところ
おすすめの理由をいろいろと述べてきましたが、オーディオブックにはまだまだなだ、と思う点もあります。
まだまだ数がすくない
やはりこれが最大のデメリットでしょう。とにかくまだまだ本の数が少ない。好きな作家の作品がなかなかなかったりします。
しかし、それゆえ今まで敬遠していた作家の作品を読むきっかけになったりもします。
そこそこの金額である
古本屋にいけば100円で買えるような本も多くあります。月10冊読んでも1,000円。それに比べれば高いかもしれません。
オーディオブックはこんな人におすすめ
忙しくて読書から離れてしまった人
年ごとに仕事は高度化・複雑化の一途をたどっています。私たちは効率化を絶えず求められ、ますます忙しくなるばかりです。
極度の緊張とプレッシャーの仕事の一日を終えた後は、もうボロ雑巾なみにくたくたです。一日中PCを見つめているような仕事だと、目がショボショボでもう何も目に映したくない、と切に思ったりします。そんな状態では、本を読もうなどという余裕な気持ちになれるわけもない。
でも、やっぱり本は読みたいと思います。本を読むことはどんなに素晴らしいかを知っているから。
だから本を読みたい!でも疲れているからそんな気力もない。んじゃ、頑張って気合を入れて本を読もうか、なんて感じで本を読んでも、ストレスになるばかりでしょうね。
という訳で、オーディオブックです。寝転がって、ボーっとして、目を閉じていても本が読める、なんと素晴らしい。本の種類はまだまだですが、当面読む本に困らない程度の数はあったりします。
種類が少ないからこそ、今まで読まなかったジャンルの本を選択したりして、新しい発見があります。オーディオブックにはまって、本を聴きまくって再認識ますね。やっぱ本っていいわ、人生に不可欠だわと。心を豊かにし、人としての枠を広げてくれる。
疲れていて余裕のない時、心が弱っている時こそ読書すべきだと強く感じました。本は心に栄養を与えてくれます。
おすすめのオーディオブックサービス
アマゾンのaudible
audible。
なかなか安直なネーミングです。しかしながら強力で圧倒的です。さすが黒船アマゾン。
おすすめする最大の理由、それは定額制であること。
コンテンツを楽しむのはもはや定額制であることが世の流れとなってきてますね。それがいいことなのか悪いことなのか。作り手側としては自分の作品を安く買いたたかれるという不安。他方、定額制、安くなったことで多くの人の目に触れる可能性が出てきたという期待。
受け手側としては安価で多くの作品に触れることができるようになった喜び。反面、ひとつひとつの作品を雑に扱ってしまう可能性も出てきてます。その作品をもっと深く理解して楽しむことができるはずなのに気付かずに通り過ぎてしまう不幸。
そんなメリットデメリットにかかわらず時代はそのような流れに向かっていくのでしょう。さすがのアマゾンでも紙の本と比べると、まだまだ問題にならないほど数は少ない。しかしながら、1ヶ月1,500円で聴き放題というのは非常に魅力的です。
落語が多いのがうれしい
落語っていいもんですよね。
若い頃はあまり興味がなかったのですが。伝統芸能なんてものは、高尚で難しいものなんだろう、という先入観にとらわれていました。ところが、聴いてみるとこれがおもしろい。
起承転結が短くまとまっていて、落語家さんの軽妙な語り口にあいまって、小気味いい物語が展開されていきます。質のいい短編小説を読むようです。
そんな一級のエンタテイメント、落語のラインナップが豊富です。
そんなaudibleは、今なら(ずっとかもしれませんがね)1ヶ月無料です。プライム会員だと、なんと3ヶ月無料です。一度お試しで会員登録しても損はないと思います。
audible中でおすすめの作品
冒頭の一文「国境の長いトンネルを抜けると雪国であつた」は、日本で一番有名な文章ではないでしょうか。
我が国が誇るノーベル賞作家、川端康成の作品です。
でも実際に読んだことのある人はそう多くないのではないでしょうか。私もそうでした。純文学なんてなんだかハードル高いし。
しかし、これほどオーディオブックと相性のいい作品はないのではないかと思っています。紙の本で読んでいたら、おそらく途中で挫折してたでしょう。
この本はストーリーを楽しむためのものではなく、日本語表現を味わうためのものでしょう。とにかく、場面や心象を描写して描写して描写しまくります。そして言葉をこれでもかこれでもかと修飾しまくります。作者の日本語にかける鬼気とした気迫を感じざるをえません。
日本語の豊かな表現に感動します。オーディオブックで聴くと、その言葉の素晴らしさがクリアに頭の中に入ってきます。
FeBe
がんばれ国内業者!
アマゾンに負けじと国内企業も奮闘していますが、ここが一番大きいんではないでしょうか。
おすすめする最大の理由、それは良い作品が揃っていること。
FeBeは定額制ではありません。1冊いくらで購入します。値段は普通の紙の本とほぼ同じです。キャンペーンはよくやっていますが。金額で比較するとアマゾンにはかないませんが、ここでしか読めない本があったりします。有名どころと言いますか、新しいものといいますか。
朗読の仕方、演出方法は質が高く、物語に入り込みやすくなっています。また、本を読んでいるナレーターの方も有名人を起用している場合がありますし。
ここはもっとラインナップを増やして、がんばってもらいたいと本当に思います。
FeBeの中でおすすめの作品
本屋大賞を取った本作。読了後はプロジェクトXの長編を見終わったような高揚感につつまれます。
出光の創業者をモデルにしたお話。
昭和の激動の時代を文字通り「海賊」のように暴れまわった実業人生伝。「海賊」とはもちろん比喩であり、別に違法行為をしていたわけではありません。なんだろう、常に大きな存在と戦っていた、というか戦わざるを得なかった人生、といいましょうか。
負けんぞ、とにかく俺は負けんぞ。アメリカには戦争には負けたけど。でも負けんわ!
戦中、戦後、復興期と本当日本人はがんばったんだな、としみじみ感じ入ります。
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