現場はもっと機械化すべきです
鉄筋屋ロボが開発されたというニュースが目に飛び込んできました。ワクワクしてその記事を見に行きました。
清水建設、アクティブリンクら/配筋アシストロボ開発/200キロ級鉄筋を楽々運搬
日刊建設工業新聞 [2016年9月7日3面]
・・・・・なんだかイメージと違う。鉄筋屋ロボって言ったら普通こんなのをイメージしますよね。
なんてったってロボなんですから。ま、レッカーでちょこちょこ吊って移動させるよりは楽かなあとは思いますが。
あんなでかい鉄骨の支柱が必要なのか?その支柱は建物の外にどーんと建てるのか?その支柱の基礎だけで大変なことになるのでは?つーかスラブ配筋の時しか使えないのか?ちょっと待てそれは半径5メートルしか届かないのか?届かなくなったらいちいち盛り替えんのか?ていうかそもそもレッカーの先に鉄筋を掴めるようなアタッチメントを付けて使った方がよっぽど効果的では?
なんて素人の外野が無責任に思ったりしました。本当は結構すごい技術なんでしょう。技術者の方々の苦労がしのばれます。
どちらにせよ、建築現場にはもっと積極的にロボットの導入を進めていくべきだと思っています。そしてやるなら徹底的に。中途半端にロボットと人間が混在していると現場はかえって危険でしょうし。
そうなれば全国に機械のリソースを柔軟に割り振ることができるので、職人不足で建築がストップするようなことも解決です。
自分の現場監督時代の経験では、ちょっとした物を運ぶ補助をしてくれるロボがいてくれたら、と心底思ったものです。じゃまになる資材や仮設材足場板脚立などを”言っておくだけで”ちょちょいと運んでくれる。その他には、ちょっと斫ってくれたり、グラインダー掛けしてくれたり、掃除してくれたり、そんな便利なロボットだと最高ですね。
ん、ちょっと待て。
でもそうなると、新人現場監督の仕事がなくなってしまうのではないか?
そもそも仕事は見て勝手に覚えてね、というのが建築業界のならわしだったりします。そういう業界はまだまだ多いのではないでしょうか。えらそうにもったいぶって大上段に構えていますが、それは、きちんとした教育システムによって人を育てることができません、と言っているようなものです。またはそのような教育の責任を放棄している、といいますか。
現場の機械化が進むと現場監督の仕事もなくなる
現状のまま、新人現場監督にそのような雑用がなくなってしまうと、そもそも仕事を覚える機会がなくなってしまいます。そうなれば、きちんとした現場監督の教育システムを整備する方向に進むかもしれません。でもおそらく進む方向は、現場監督の削減でしょう。
現場の機械化・ロボ化が進むと、必要な現場監督の人数も大幅に減ってしまう可能性があります。VRやARを利用して、全国の現場に遠隔で指示が出来てしまいますから。
そうなれば少数の優秀な監督しか必要なくなってしまいます。将来的にはそれすらもAIにとって変わられるかもしれません。
そうはいっても、現場の隣のおやじがうるせえぞと言ってどなりこんできた、なんて状況にに対してはやはり人間でしか対応はできないでしょうけど。
今後は、なんとなく現場監督を続けていけばそれとなくなるのではないか、というぼんやりした考えでは生き残っていけない時代になるでしょう。現場監督としてエキスパートを目指すのか、それとも他の道を探すのか。
ここにたどりついた現・現場監督の人の中には、そんなことを考える余裕のない人もいるかもしれません。
日々死にそうで家にたどり着いて寝るだけで将来のことなど考えられないわ、と。そうですね。分かります。私もそうでした。
そんな、仕事がつらいしんどいもうやめたいとてもじゃないけど続けられない、と感じている人はまず転職しちゃいましょう。さくっと。同じ現場監督の仕事でいいです。探せば今よりはましな会社は見つかるでしょう。命を削ってまでもすべき仕事などありませんので。とりあえず転職サイトに登録してみるのもいいでしょう。
とりあえず自分の労働環境を整えること。まずコレからです。
そして労働環境がなんとか働けるかな、というレベルになったら次は現場から卒業する準備を進める。準備とは具体的には資格取得です。とりあえず建築士(できれば1級)で、あとは宅建などでしょうか。
番外ですが持っていて面白いのが簿記2級ですね。現場の人間ですが会計の知識があるので、数値をもとにした会社の業績向上に寄与できます!なんてアピールができたりします。
資格なんてあまり役に立たないぜ!などと言われていますが、ないよりあったほうが100倍マシです。 コイツはきちんとした努力ができる人間だ、とは見てもらえます。
資格の取得方法ですが、建築士は独学では無理なので、日建学院などの強制的に通学するような所を選びましょう。宅建や簿記は独学でも大丈夫です。
ちなみに、現場監督からの常識的な成り上がりを描いた映画(物語のメインテーマではありませんが)にこんなものがあります。お時間があれば是非。
現場監督の仕事で身につくスキルは貴重です
現場監督をしていたという経歴は強みである、と思っています。現場で身に付くスキルは貴重です。他の職種・業種では得ることができない総合力が身に付きます。これは現場監督をする大きなメリットです。いわゆる「潰しが効く」人間になれます。
私自身、現場監督をやめた後の仕事では営業系、企画系、事務系などいろいろな業務を経験しましたが、無理なくこなすことができました。これも地獄のような現場で身に付けた経験があったからです。違う職種・業種で働いてそこで一緒に仕事をしている人たちを見て感じるのは、自分はトラブルに対する対処力は他人より強いぞということ。
現場監督をしているみなさんはもっと自分の能力に自信を持っていいと思います。
ちなみに、現場で身に付くスキルは具体的に以下の5つでしょうか。
中間管理職的能力
わがままでめんどくさい職人や設計士や施主の間に入って折衝することが日常業務と化すなかで培われます。
だんどり力
これこそ現場監督の力。物事を順序立てて進めていく、同時に複数の案件を同時進行させられる力です。建物を工期通り問題なく完成させるためには、様々で多くの業者をタイミングよく現場にブチ込まないといけません。ひとたび段取りに失敗すればその損失がかなりの金額として返ってくるのが建築の現場です。そんな恐怖と戦いながら身に付く力。それがだんどり力です。
想像力気遣い力
たいして書き込んでいない建築図面から完成した姿を想像し足りない部分を補い、設計士の意図を汲みとりつつ出来るだけ安く簡単な施工で仕上げるための施工図を書き上げないといけない、という無茶な業務をこなすなかで培われます。
失敗した時の対処(リカバリー)力
現場は失敗というか予定と違う結果となることは日常です。そんな起きてしまったとんでもない状況をうけて、いかにたいしたことではない状況にもっていくかが現場監督の腕の見せ所だったりします。毎日毎日そんなことをしている現場監督ならではの力ですね。
任務遂行力
不完全であってもたとえ70点の出来であっても、現場は工期までに完成させなければいけません。いちいち小さい所にこだわらずに、現場全体をがばっと掴んでぐわーっと進めていくことが現場監督には求められます。そんなやりきる力が現場監督には備わっています。しかし、適当でいいからカチあげてしまえ、という考えにも陥りやすいのも現場監督ならではの欠点だったりします。
現場監督をしているとこんなにすごい能力が身に付くんですね。すごいですね。勢いでここまで書いてきましたが、ちょっと我に返った自分がいます。本当なんでしょうかね。
まあ、とにかく今日を生き抜いて、明日につなげましょう。
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