斫り(はつり)は別に現場監督の仕事ではありませんが。
斫りとは、下のような機械を使って、現場のコンクリートの塊を砕いて、削り取る作業です。
軽くはない機械(斫り機という)を抱え、刃先(ピックという)を斫りたい箇所に当てて、身体を固定しひたすら振動に耐える作業は、なかなかにきつい。もちろん専門的にする業者がいて「斫り屋」さんと呼ばれています。
この作業は現場でよくやったもんです、うんざりするほど。新人の頃から監督を辞めるまで。新人の頃は先輩から「ここはつっといて!」と指示されるまま、とにかくひたすらはつっていましたね。
最初はコツも分からないので、少しずつしかはつれないし、やたらと力んでやるもんだから、疲れるばかりでしたが。なんだか肉体労働してるわオレ、って感じになります。
新人の頃は言われるまま何も考えることもなく作業をしていましたが、しばらくして現場のことが少しは分かってくると、なぜはつらないといけなくなったのか、その理由を知るところになります。
はつらないといけないのは、コンクリート打ちに失敗したから。で、「斫り屋」を呼ばないのは、そんなお金はないから。
失敗しちゃったけど、お金もないから自分らでリカバリしないといけない。そんな悲しい現場の現実がありました。そんなことを知ってしまってからは、はつり作業を命じられるたび、
先輩、あなたコン打ちミスりましたよね?
と心の中で叫びます。
まあ、ちょっとした作業で済むので、わざわざ業者に依頼するまでもない、という理由もあったりするのですがね。
建築では現場でコンクリート打ちをするので、うまくいかないのはあたり前だったりします。余計なところまでコンクリがはみ出たわ、とか。コンクリの圧力で型枠が膨らんでもたわ、とか。ドレンを据えておかなあかんかったけど忘れてしもたわ、とか。
なんだかんだと、はつらなきゃいけない場面はよくあるものです。
新人の頃いやというほどはつりをやらされるので、自分が現場を持ったら、こうはならないでおこうと、強く心に誓います。オレがやるからにはコン打ちはびしっと締めて、手ぬかりなくやり遂げるぜ、なんてね。
でも、はっつてるんですよね、結局。ミスしてるわけですよね、自分。
建築現場は、頭で思い描いていた通りにはならんもんです。
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