コンクリートは生ものだ
コンクリート工事は現場の一大イベントです。別に楽しくはないけど。
コンクリートは時間経過とともに液体から固体に変化する文字通り”生もの”です。建築にとって非常に便利なものですが、非常にやっかいなものでもあります。
一気にやり切ってしまうことが重要です。途中で中止するなんてことは簡単にできない。なにかトラブルが起きたとしても、その場で解決してしまわないといけない。
なにも起きるなよなにも起きるなよ、と監督はコン打ち中びくびくして工事を見守ります。という訳で、トラブルが起きないように事前準備をしっかりやっとけよ、となるのですが。
コンクリート打設計画を考える
今回のコンクリートの打設量をもとに、実際に打込めるペースはどれくらいやろか?を考えます。
現場への搬入路や敷地内のスペースを見て、生コン車の2台付けが可能なのか?それにより、生コン車はどれくらいのペースで回すのか?を考えたり。
手配するポンプ車の能力はどれくらいか?圧送の人数、土工の人数は何人なのか?基礎や躯体の形状からスムーズに打設できるのか、手間がかかりそうなのか?を考えたり。
などなど色々と現場の状況を考慮して、実際の計画を立てていきます。しかしながら、結局は経験と勘頼りといういいんだか悪いんだか、皆そうしてきたんだからそんなもんやろ、というやり方に落ち着いたりします。
当日の天気が問題です
その後、コンクリート量を計算して生コン屋に電話を入れたり、各職人の手配の電話をしたりして本番に備えます。
ここで重要というか悩ましいというか難しい問題がお天気です。晴れの日にコン打ちするのが一番ですが、そうはイカの金玉。
工程に天気が合わせてくれるはずもなく、ここでの判断はなかなかに難しい。実際の現場の進み具合を横に見つつ天気予報を調べ、まあまあの天気になりそうな日を選んで決定しなければいけない。現場の仕事を始めて特に天気には敏感というか過敏になってしまいましたね。降水確率の何%という数値をやたらと気にしたりします。
で、そんなこんなで決めた日を各方面に連絡した後、監督は当日までなんとなく不安な日々を過ごします。天気もそうですが、型枠工事が間に合わんわ!という予期せぬアクシデントが発生したりする可能性もあって、安心できません。
実際、寝ている時「ああっコンクリ打ちに間に合わん!」という夢を見て、がばっと起きて夢だと分かって安心するということはありました。
スランプ試験なるものがある
いよいよやってくる当日。現場には多くの職人が入り、ポンプ車が据え付けられ大きなエンジン音を響かせます。
現場の生コン車が到着したら打設開始となります。ポンプ車のブームを動かす音、圧送する音、どでかいバイブレーターをコンクリートにかける音、残り少ない生コンを吐き出すべくミキサーを急回転させる音、など現場はたいそう騒々しくなります。
現場の監理者である設計士もやってくるので、その相手もします。その設計士の立会いの下で、スランプ試験なるものも行います。生コン屋の職員がやってきて、コンクリートの流動性をテストします。
”流動性”というと分かりにくいですが、言ってみれば”固さ”のことでしょうか。んーちょっと違うか。スランプ試験の写真撮影が終われば設計士はとっとと帰っていきます。
その後は打設している写真をぼちぼち撮ったり、緊張した中でも一息つくような時間を過ごします。何事もなければ、ですが。
テツダンゴを設置していくぞ
その次の仕事としては、打ち終わった箇所からアンカーボルトの中心にテツダンゴなるものを埋め込んでいきます。こんなやつ。
テツダンゴとは鉄骨柱のベースプレート下端の高さをきめるもの。柱の中心になる場所にセットします。
コン打ちほやほやだとまだ柔らかいので沈み込んでしまうし、時間が経ってしまうと埋め込みにくくなるので、タイミングを図ることが求められます。
最後の必要な生コンの計算をする
そんなこんなをしていると、いよいよクライマックスです。もう少しで終了!の所まで来ました。
ここで残りのコンクリート量の計算です。
今、現場に着けている生コン車の運転手に残りどれくらいある?と聞いて、どこまで打てそうかを推測します。その推測をもとに型枠にスケールをあて残り必要となる量を計算します。まずその時点でだいたいあとどれくらいであると生コン屋に電話を入れておきます。
で、いよいよその生コン車が空になった時点で再度計算をし、正確な量を生コン屋に知らせます。
職人は手待ちになるとぶーぶー文句を言いだすので、なるべく早く最後の生コン車を出したい。しかし、こちらとしては出来るだけ正確な量を把握して、ロスのないようにしたいと考えるのでぎりぎりまでねばる。ここらへんのバランスを取るのが難しい。
ま、そうはいっても最後は若干多めに頼むんだけどね。
足りなくなったら困るから。そうやってはれてコンクリート出設が完了します。
さっきまで騒々しかった現場に静寂が訪れた時、ほっとした解放感につつまれます。なんともいえない安心感というか満足感というか。
それで仕事は終了だったりしますが、当日の天気が良すぎて日差しも強いという場合には、コンクリート表面の養生が必要になります。散水したりなどして表面の急激な乾燥を防ぐようにします。
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