現場監督の仕事『土工事』の流れを解説

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土工事、それは水との戦いである。

昔見たプロジェクトXの黒部ダム建設の回では、トンネル工事で壮絶な水との戦いが描かれていて、すごすぎるわ、と強く心に残った記憶があります。

ま、それとは比べ物にならないほどちっぽけですが、一般の建築工事にも水との戦いはあります。現場にもよりますが、土を掘るとたいてい水が湧いてきます。工事の規模が大きくなって、深く掘れば掘るほど湧いてくる水の量も多くなります。

もちろん、地下からではなく雨が降っても水はたまります。

そのようなわけで、水をどうするかが土工事の大きな悩みのたねですね。水がたまっては仕事ができないので、なんとかして水を抜かなければならない。

大規模な現場だといろいろな方法があるみたいですが。私が主に担当していた3階建ての集合住宅程度の現場では、一般的な水中ポンプを何台か使って排水していました。

コイツに青いビニールホースを番線でくくりつけて、現場の一番低くて水が集まってくるであろう場所にいくつかつっこんでおく。

水以外にも現場からは出てくるモノがある。

水以外にも、まれにではありますが遺跡が出てくることもあります。ほかには不発弾とか。

私のいた現場ではさすがに不発弾は出てきませんでしたが、なんだか遺跡のような土器類が出てきたことはありました。そうなるといったん現場を止めて、市の職員に確認をしてもらうことになります。その間現場が止まるので工事をする側としたら迷惑な話なのですが。

その時はたいして重要なものではなかったらしく、そのまま進めていいよ、という結果になりました。もし歴史的に重要なブツだったら、調査が入ったりして面倒なことになるらしいすね。

土工事ではユンボが大活躍する。

土工事の作業の流れは、基礎工事のための土を掘る(掘削)→掘ったところに砕石を敷く→その上に捨てコンを打つ、となります。

その一連の作業にはあまり現場監督の仕事はからんではきません。

実際の作業では「ユンボ」がメインとなり進めていきます。建設機械といえば誰もが思い浮かべるであろうあの黄色いショベルカーのことですね。

「ユンボ」とはあるメーカーの製品名なのですが、現場ではショベルカー全般のことをこう呼んでいます。

土工事という舞台では花形ですね、ユンボは。もう世界は俺を中心に回ってるぜ状態。

地面を掘り、斜面をならし、砕石や生コンをバケットで運び、バケットについているフックで様々な資材を動かす、もう八面六臂の活躍ですね。こいつがガシガシと地面を掘っていくさまは見ていて気持ちがいいものです。

しかしながらユンボだけでは作業は完結できません。手元として地面の下で実際に作業をする生身の人間が必要だったりします。

ユンボのオペレーターと手元で作業している人を見比べると

労働環境違いすぎね?

と思ったりもしました。しんどさの具合がえらい違うなと。

ユンボの操縦席はエアコン付で夏でも冬でも快適ですしね。だからオペの中には「手元の人に悪いからエアコンはつけない」という人もいました。

一方で、手元の人でも「あんな狭いところに一日中座りっぱなしよりも外で体を動かしているほうが楽」という人もいました。

湧いてきた水の処理も工事業者がおこないます。もちろん、水対策をどうするのか、コストや工期を考慮に入れつつ業者と打合せをし決定していく、という仕事はありますが。

基礎墨だしの時に水中ポンプが大活躍。

実際に現場監督が体を使って排水作業にまい進するのは、基礎の墨だしの時だったりします。

この時ばかりは、水中ポンプ(略して水ポン)がそんなに好きなのか、というくらい一日中水ポンをなぶっていますね。

仮設の電気のある所からドラムで水ポン近くまで線をひっぱってくる。水ポンには青いビニールホースを番線でくくりつけてき、そのホースをねじらないように排水できる場所、側溝などに落とし込みます。

ここでホースがねじらないようにするのが重要で、ねじったままだとそこで水が止まってしまいます。そうなってしまうと一旦水ポンの差込を抜いて、ねじりを直さないといけないというめんどくさいことになってしまいます。

差込を抜かないでそのままねじりを直してもいいのですが、圧がかかったままなので、うまくねじりが取れなかったり、ホースの端のところまで行ったところでホースが思わぬ挙動をおこして水をぶっかけてくることがおきます。

夏だったら「ま、水浴びしたと思えばいいわ」とまだ寛容な心持でいられますが、これが冬であったら水ポンに対して殺意が生まれますね。

めんどうがらずにやり直すことが大切です。

現場ではめんどうだからといって作業をショートカットしようとすることは大変危険な行為となります。事故が起きるときはたいていそんな時だったりします。作業の手順がそうなったのはそうなった理由があるということを忘れるべきではありません。

墨だしの時はそんな水ポンをあっちやったりこっちやったりして、現場の水を抜いていきます。

水ポン本体もまあまあ重いが、たっぷりと水をたたえてニシキヘビみたいに太った排水ホースはもっと重い。ホースは何十Mにもなるので、重いのも納得なのですが。

ホースを持ち上げつつずずっと末端まで水を絞りだすように移動していけば、中の水はなくなって軽くなるのですが、ここでも面倒なのでそんなことはしなかったりします。

あれ?少し前で言っていたこととは矛盾してる気がしますが・・・。

なので往々にしてそのまま強引に水ポンを動かします。膝と腰にきますね。

二人いれば一人は水ポン本体、もう一人はホースといった具合に持てるので、ちょっとは楽になりますが。

そんな感じで水を抜いた後は、捨てコンの上に残っている水をほうきなどでかき出して、ガスバーナーで乾かして、墨だしをする、というのが一連の流れですね。

水を抜いて、かき出して、バーナーであぶって、墨を打つ。

抜いて、出して、あぶって、打つ、の繰り返し。

いやになります。

完全に排水できない時もある。

でもこうやってうまいこと排水できて、墨だしができればいいほうで、現場の状況や工程の関係でそんなことをやっている時間がないケースもでてきます。

そのような時は水糸とコンクリ釘が大活躍します。印は鉛筆(ホルダー)でつけて、その印にコンクリ釘を打ち込んで、その釘同士を水糸でつないでいって墨をだしていきます。

水が抜けないときはこのようなやり方しかないのですが、欠点があります。

糸は切れる、ということ。

あまり気を使わない鉄筋屋などが、長靴で踏んだり引っ掛けたり、鉄筋を無造作に置いたりして、よく切ってくれたりします。

あ、監督さん糸きれとるわ、なんてまるで自分は関係ありません糸がかってに切れましたわ、なんて勢いで言ってきたりします。

お前が切ったんやろが!!!

腹の中は煮えたぎってますが、証拠もありませんし、粛々と再度糸を張ります。

ちなみに水ポンは、吸うべき水がなくなると「ズッズッズッ」と鼻をすするような音をリズミカルにくりだすようになります。なんだか間抜けな音です。

現場から帰るときにこの水ポンの電気を抜き忘れると一晩中「ズッズッズッ」とやらかします。結構耳障りな音なので、たいがい次の日には近隣から苦情がはいります。謝罪をして回るという余計な仕事が増えてしまうので、注意が必要です。

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