現場監督の仕事『杭工事』の流れを解説

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杭芯出しをする

杭打ち機が現場にやってくるまでにしておかないといけない仕事が杭芯出し、です。

現場の地面に「ここに杭を打つんですよ」という目印を付ける作業。目印に使うのは、30センチほどの鉄筋とこれまた30センチほどの目立つ色の幅広ビニールひも。

鉄筋の頭にひもをくくりつけて、地面にたたきこみます。たたきこむ位置を出すのに、トランシットという測量機器を使って、木のクイをカケヤで打ち込んで、水糸を張ったりする、ごちゃごちゃした長時間の作業があるのですが、詳しく説明するのがメンドくさいので割愛します。

で、鉄筋をたたきこんだら、スプレーでマーキングして終了です。

ふー、やっと杭芯だしが終了ですね。

杭打工事の開始

杭打機とその他設備、杭本体がトレーラーで現場に入ってくる。

杭打の工法はいくつかあるが、自分の現場でよくあったのは、既成コンクリート支持杭によるセメントミルク工法でした。

重機類や資材等が現場に入ってくると、いよいよ開始だなあ、と思います。やる気に満ち溢れる、というより、ああ完成までやらないとあかんなあ、という後ろ向きの感情。

そんな心持とは関係なく、杭工事が始まります。業者に施工図を渡して打合せをし、GL(グランドライン 建物の基準となる高さ)を指示します。

GLはどうやって指示するのかですが、たいがいは敷地に近い電柱に印をつけておきます。

敷地測量時にGLの高さを決めるのですが、その高さはほぼ地面と同じ高さだったりします。本来ならば、その基準高さを表すのに小さな杭を地面に打ち込んで、天端(てんば 部材の頂点を表します)をGL±0などとするのでしょうが、めんどくさいのでそんなことはしません。

代わりに、GL+1000mmの高さを、そこらへんに建っている適当な電柱に小さく印をつけます。あくまで目立たないように、でも消えないように、油性のマジックなどで書いておきます。

杭工事屋は(現場では業者のことを“屋”を最後につけて呼ぶことが多い)その印をもとに、打ち込む杭の天端の高さを決めていきます。

しかし、杭打機はいつ見ても倒れるのではないかとハラハラしますね。穴を掘ったり、杭を打ったりする部分が煙突のように長く高いので、どう見てもバランスが悪い。

テレビのニュースで横倒しになった杭打機の映像を見たことある方も多いと思います。あんなことになったら、大変なるおおごとですね。自分の現場がそうなったら、なんて想像するだけで心拍数が跳ね上がります。

現場の地盤は軟弱なので、杭打機が移動するときは、鉄板を敷きながらその上に乗っかっていきます。

でも、何かのタイミングでバランスを崩すのでは、との不安は工事中はずっと続きますね。

杭工事で発生するトラブルとは

杭工事の最中は、現場監督はそれほどすることはありません。施工中の写真を撮るくらいでしょうか。何もトラブルが起きませんように、と祈るのみです。

起きる可能性のあるトラブルとしては、以下の3つほどでしょうか。

杭打機が杭芯の目印を消してしまう。

せっかく苦労して出した杭芯の目印の上を、杭打機やほかの重機が何も考えずにガタガタガタっと通ってしまい、目印が分からなくなってしまうケース。

こうなるともう一度出さないといけないのだが、この頃には現場内には様々なモノがあるので、作業の難易度は高くなります。トランシットで覗いても、基準となる印が見えなかったりするので、心が折れそうになります。

もう、テキトーでいいわ!という内なる声との戦いになります。でも、がんばって杭芯を出します。

支持層が予定通り出てこない。

予定の深さまで掘ったけど、支持層が出てこない。考えただけでもぞっとするわ。

これは、マンションの杭打偽装ということで、大々的にマスコミに取り上げられたので、記憶に残っている方も多いでしょう。

支持層が出てこないなら、出てくるまでもっと掘らなければいけませんが、そうなると現場に用意した杭では長さが足りなくなってしまう。いったん現場を止めて、代わりの杭が入ってくるまで待たなければいけない。

時間もお金もかかってしまう結果となります。

で、現場の人間(現場監督なのか杭打屋なのか分かりませんが)がこのままやってまえ、と判断したことであれほどの大問題となったわけです。

現場監督(きちんとした施工意識を持った)が朝から晩まで重機の横にはりついて見ていれば、きちんと施工できているかは確認できたでしょうけど。しかし、現場監督にそれほどの時間はないので、業者からの報告書を信じるしかなかったりします。ま、でも、その報告書の中身をすべて把握して、チェックできているかというと、はなはだ自信がなかったりします。

私自身も現場ではなんとなく杭工事を眺めている状況でした。オーガー(掘削ドリル)の挙動で、ドリルは回転しているけどそれ以上掘り進めなくて、下から押し返されているような動きになるとそろそろ支持層なのかな、と思っていた程度ですし。

建設業は怖いです。現場の人間のちょっとした間違い(ちょっとした、ではないですが)が後々とんでもない損害となってしまいます。

現場監督としてはその心理は理解できます。現場を止めれば、工期に間に合わないかもしれない。新しく杭を発注すれば、余計な費用がかかってしまう。その責任は現場監督に押し付けられています。

会社に相談しても、そんなもん現場でなんとかせいや、と突き放されているかもしれません。これはあくまで想像ですが。

杭工事や基礎工事などは自然を相手にした不確定要素が多くトラブルが多発する工事ですが、だからこそキッチリ仕事をする必要があります。まあ、言うのとやるのでは雲泥の差なのですが。

これが内装工事などですと、ちょっとした判断ミスなどは後でいくらでも取り返すことができるのですがね。

横浜のケースでは一棟まるごとの建替え。

もう恐怖しかないですね。そんな現場に自分があたらないことを祈るばかりです。

掘っている途中で障害物にあたってしまう。

その他のトラブルとしては、掘っている最中に岩などの障害物にあたってしまい、それ以上掘り進めなくなってしまう、ということもあります。

それでも、がんばってグリグリグリっと掘り続けますが、やっぱり掘れない場合は、ちょっと位置をずらして再度掘ります。そうなると、杭の位置がずれてしまいますが、仕方がありません。基礎工事の時になんらかの対処をすることになります。

そうでなくても、杭の位置はずれるものです。我々現場監督は杭工事中、杭があまりずれてませんように、ずれても設計変更なしでいける程度で納まってくれますように、と杭打機に念を送っています。

次の工事の段取りだ

杭工事をしているころには、次の工事、土工事や基礎工事の段取りをしなきゃいけない。

施工図では基礎伏図をわしゃわしゃっと書いて、土工事屋や鉄筋屋や型枠屋などに勢いよく電話をする。

そうこうしているうちに、杭工事は無事終了となります。重機で地面をきれいにならした後、杭打屋は現場から退出していく。

杭打屋の去った後は、見た目は現場スタート時とあまり変わらない風景が広がる。杭自体は地面の下にあるので見えてこない。

次は、土工事で地面を掘り返して基礎工事に突入だね。

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