ここをご覧になっているのは、現場監督という仕事に興味がある方だと思います。
現場監督の仕事内容に関しては以下にまとめていますので、ご参照ください。
ここでは、その現場監督という仕事を通じて得ることができる、5つのスキルについて解説をしていきます。どれも、人生をサバイバルするのに非常に役立つスキルです。
しかしながら、全ての現場監督の仕事にあてはまるものではありません。会社の規模やその業務内容により監督の仕事内容や役割は変わってきますし、その本人の受け止め方も千差万別です。
ひとりの元現場監督の話として聞いていただけたら幸いです。
人生に役立つ貴重なスキル5つとは何か
現場監督の仕事で身に付く、人生に役立つ貴重なスキルは、以下の5つです。
- 中間管理職的能力
- だんどり力
- 空間認知力&想像力
- トラブル対処力
- 任務遂行力
以上の5つのスキルは、どのような職種・業界においても応用がききます。
いわゆる、「潰しが効く」というものです。身に付けておいて損はありません。
中間管理職的能力
現場監督は、わがままでめんどくさい人達(職人や設計士や施主)の間に入って折衝することが、日常業務となっています。もちろん基本的にはいい人ばかりですが、例外的に存在しているものです。
現場における上下関係を理解し、それぞれの人間性を把握した上で、発せられた指示や意見に対し、状況に応じて最適化をしてメッセージの伝達に努める。
現場がスムーズに進行するためには、どのような言葉遣いや行動が適切なのか、を日々PDCAしていくなかでこの能力が培われていきます。
だんどり力
これこそ現場監督の力。
物事を順序立てて進めていく、同時に複数の案件を同時進行させられる力です。
建物を工期通り問題なく完成させるためには、様々で多くの業者をタイミングよく現場にブチ込まないといけません。また、現場は日々変化しており、臨機応変にスケジュールを変更する必要にせまられます。
そのような変更を見越した上で、全体のだんどりをコントロールしていきます。ひとたび、だんどりに失敗すればその損失がかなりの金額として返ってくるのが建築の現場です。
そんな恐怖と戦いながら身に付く力。それがだんどり力です。
空間認知力&想像力
たいして書き込んでいない2Dの建築図面から、完成した3Dの建物の姿を頭の中で構築する必要があります。
図面の矛盾点や足りてない点を発見し、その解決策を考えます。その解決策は、設計士の意図を汲みとりつつ、出来るだけ安くて簡単な施工方法でなくてはなりません。そんなことを考えつつ、施工図を書き上げていきます。
そのような無茶な業務をこなすなかで培われる力になります。
トラブル対処力
リカバリー力とも言っていいかもしれません。
現場は生ものなので、失敗というか予定と違う結果となることが日常です。
そんな起きてしまったとんでもない状況をうけて、いかにたいしたことではない状況にもっていくかが現場監督の腕の見せ所だったりします。
そんな、トラブル発生
解決を毎日こなしているうちに、どんなにマズい状況が発生しても、動揺せずに解決策を考えられるようになります。トラブル解決が日常業務の一環となっている現場監督ならではの力ですね。
任務遂行力
不完全であってもたとえ70点の出来であっても、現場は工期までに完成させなければいけません。
いちいち小さい所にこだわらずに、現場全体をがばっと掴んでぐわーっと進めていくことが現場監督には求められます。そんなやりきる力が現場監督には備わっています。
しかし、適当でいいからカチあげてしまえ、という考えにも陥りやすいのも現場監督ならではの欠点だったりします。
そのスキルを身に付けることができる理由
ではなぜ、現場監督の仕事では、そのような5つのスキルを身に付けることができるのか?
結論から申し上げると、
それはしんどい仕事だから
ということにつきます。
多岐にわたる種類の業務を数多く経験することができるから、です。では、そのしんどい仕事の内容はどのようなものなのかを説明していきます。
ただ、しんどいことを説明してもネガティブになるだけなので、ここではあえてポジティブな見方となる表現にトライしてみることにします。
- 頭脳労働と肉体労働を同時体験可能なハイブリッドワーク
- 経験値を短期間で向上させることができる長時間労働
- いきなりマネージメントの立場につける
- 様々なバックグラウンドを持つ方々をマネージメントできる
- ビジネスにおけるすべての仕事を経験できる
頭脳労働と肉体労働を同時体験可能なハイブリッドワーク
現場監督は、頭脳労働と肉体労働を同時体験可能なハイブリッドワークであり、一般の2倍の経験をすることが可能です。それぞれの主な業務内容は以下の通り。
- 工程表作成
- 施工図作成
- 積算、実行予算作成
- 業者の手配、段取り
- 各種提出書類作成
- 請求書チェック、出来高確認
- 墨出し
- レベル出し
- 施工写真撮影
- 清掃(本来は現場監督の業務外)
- 邪魔な資材の運搬(本来は現場監督の業務外)
- やむをえない職人化(本来は現場監督の業務外)
以上をこなしていくことで、精神的にも肉体的にもレベルアップしていきます。
経験値を短期間で向上させることができる長時間労働
人より長く働けば、それだけ先に進むことができます。
アメリカの起業家イーロン・マスクは、こう言っています。
週100時間働けば、必ず成功する
イーロン・マスクの言葉
週100時間といったら、平日は朝の8時から夜中の0時まで、土日は10時間づつ働く必要があります。
よく言われていることですが、仕事の中に自己裁量でやれる部分がどれくらいあるかによって、感じるストレスは違うとのことです。
自分のやりたいことを思うがままに出来ていれば、長時間労働は苦にならないということでしょうか。
だからといって、生命に危険が及ぶ長時間労働はやるべきではありません。
いきなりマネージメントの立場につける
例えば、社会人3年目で、いきなり50人の職人がいる現場の監督者となる。普通の会社ではありえないことです。
それも、ただ業務を回していけばいいということではなく、巨大な構造物を期限内に作り上げなければいけないという責任も背負うことができます。
その立場になった時、一瞬、すごい立場になったなと誇らしい気分になりますが、すぐに、その責任の大きさに戦慄します。
様々なバックグラウンドを持つ方々をマネージメントできる
指示して動かすべき人間である職人は、様々なバックグラウンドを持つ社外の人間です。社内のルールやヒエラルキーをもとにマネージメントを行うという常識はそこには存在しません。
では、そのような人間をどうやって動かしていくのか、を真剣に考えることになります。
それにより、人間掌握力やコミュニケーション力は、いやがおうにも向上せざるを得ません。
ビジネスのすべての仕事を経験できる
現場監督は1つの現場内においては、社長としての立ち位置になります。少々ニュアンスは違うかもしれませんが。
小さな会社だったら、社長がすべての業務を行います。それと同じことが、現場では経験できます。
人、モノ、カネを管理して、商品を作り上げる。エラい人達(施主や設計士)との難しい折衝もこなす必要があります。
営業的な行いはありませんが、業務全てがいわば営業みたいなものです。
現場監督という仕事をどう捉えるか、個人的な所感
以上の通り見てきましたが、現場監督はしんどい仕事です。しかし、自分自身を鍛えて、一刻も早くスキルを身に付けたいと考える方にはおすすめできる仕事でもあります。
どんな仕事にも当てはまることですが、現場監督という仕事にも向き不向きがあります。向いてないなと感じているなら、スキルを獲得した後は、すみやかに次のステップへと進んでいくべきです。
それは、設計士になるのか、他業種の事務系になるのか、はたまたIT系の技術者でもいいかもしれません。
現場監督の仕事を一通り経験した後なら、たいていの仕事はこなすことができるようになっています。
もちろん、大手ゼネコンのように分業化されて労働環境も良く、将来的に大きな仕事に携われるのであれば、その場所で頑張るという選択肢がベストになるかもしれません。
現在、現場監督の仕事に就いていて、毎日つらいと感じている方もいると思います。そんなつらい日々も、次に進むための修行期間なんだと考えられれば、気分も変わってくるのではないでしょうか。
もちろん、明らかにおかしいブラックな会社なのであれば、さっさと逃げましょう。
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